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退去費用敷金返還

退去後に敷金が返ってこない。内訳の確認と返還を求める方法

退去後に「敷金は原状回復費用に充てるのでお返しできません」と言われることがあります。敷金は借主の債務不履行がない限り返還されるものです。差し引く費用には根拠が必要であり、内訳の確認と返還請求ができます。

結論:敷金は原則として返還されるもの。差し引きには根拠が必要

民法上、敷金は賃貸借終了後に借主に返還されます(民法622条の2)。貸主が差し引けるのは、借主の故意・過失による損傷の修繕費など、正当な理由がある費用だけです。内訳の開示と根拠の説明を求めることができます。

1. 敷金の法律上の性質

民法 第622条の2(2020年改正で明文化)

貸主は、賃貸借が終了し建物の返還を受けたとき、 敷金をその時点で存在する賃料その他の債務の弁済に充てた残額を 返還しなければなりません。

つまり敷金は「返すのが原則」であり、 差し引くことができるのは「借主の債務(家賃滞納・借主負担の修繕費等)」だけです。 貸主が負担すべき費用を敷金から差し引くことはできません。

2. 差し引ける費用・差し引けない費用

敷金から差し引ける(借主負担)差し引けない(貸主負担)
家賃・管理費の滞納分経年劣化・日焼けによる損傷
借主の故意・過失による損傷の修繕費通常使用による汚れ
タバコのヤニ・ペット傷(借主過失)家具の設置跡・へこみ
特約で借主負担と定めた費用(要件あり)設備の老朽化・故障

また、借主負担になる場合でも経過年数による残存価値の考慮が必要です。 6年入居後のクロスは残存価値約10%であり、 その分しか差し引けません。

3. 内訳を確認するステップ

1

敷金精算書(明細書)を求める

「敷金の精算内訳を費目別・金額別に書面でいただけますか」と連絡します。明細なしに「全額充当」は認められません。

2

各費目が借主負担になる理由を確認する

明細をもらったら、各費目について「これは借主の故意・過失による損傷ですか、経年劣化ですか」を確認します。経年劣化は貸主負担です。

3

残存価値の計算が行われているか確認する

借主負担になる費目でも、経過年数による残存価値の計算が必要です。「残存価値はどのように計算されていますか」と聞きましょう。

4

入居時の状態との比較を求める

「この損傷は入居前から存在していたものではないですか」という観点で、入居時の写真・チェックリストとの照合を求めます。

4. 納得できない場合の対処

① 内容証明郵便で返還請求する

根拠のない差し引きについて、内訳の開示と返還を書面で求めます。 内容証明郵便は「この日にこの内容の請求をした」という記録になります。

② 消費生活センター・都道府県窓口に相談する

消費生活センター(188)や都道府県の宅建業法担当部署に相談できます。 記録が整っていると(明細の請求→業者の回答 or 無視)、相談しやすくなります。

③ 少額訴訟を利用する

60万円以下の金銭請求は少額訴訟で対応できます。 弁護士費用が返還額を超える場合でも、少額訴訟なら本人申立てで費用を抑えられます。

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5. 業者の返しパターンと対処

原状回復費用が敷金を超えているので返還はありません

「各費目の内訳と、それぞれが借主負担になる根拠・残存価値の計算を書面でご説明ください。内訳を確認した上で判断します」と伝えましょう。

クリーニング費として全額充当です

「クリーニング費が借主負担になる根拠と、費用の内訳(業者名・作業内容・金額)を教えてください。また残存価値の計算はどのようになっていますか」と確認しましょう。

明細は出せません

「敷金の精算についての明細は、借主として確認できる書類と理解しています。内訳をいただけない場合、その旨をご連絡いただけますか(記録のため)」と伝えましょう。

6. 参考:関連する判例

最高裁判所 平成23年3月24日判決(第一小法廷)

敷引特約(退去時に敷金の一定額を返還しないとする特約)について、 消費者契約法10条に基づく無効を主張した事案。最高裁は 「敷引金の額が高額に過ぎると評価されるべき場合には無効となり得るが、 本件の敷引額は賃料月額の3.5倍程度であり高額に過ぎるとはいえない」として 特約を有効と判断した。

実務上の意義:敷引特約は一律無効ではないが、 金額の相当性(月額賃料の概ね2〜3倍が目安)は常に問われる。 高額・包括的な敷引は消費者契約法10条により無効とされる余地がある。

参考・出典

  1. 1.民法 第622条の2(敷金)敷金の定義・返還義務e-Gov 法令検索
  2. 2.「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について再改訂版・平成23年国土交通省 住宅局
  3. 3.「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」参考資料国土交通省 住宅局参事官令和5年3月

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