賃貸費用チェッカーβ

このサービスを作った理由

違和感はあるのに、言葉にできない。聞こうとしても、聞き方が分からない。ようやく聞いても、「当社の規定です」で終わる。このサービスは、その詰まり方を解くために作った。


再契約の請求書に「仲介手数料」と書いてあった。確認すると「事務手数料です」と言われた。根拠を聞くと「書式上の問題」になり、最後は「本件については回答を要しません」と返ってきた。名目だけが変わり続けた。

これは私に限った話ではないと思う。

最初は、ただ確認したいだけだった。

これは何の費用なのか。なぜこの名目なのか。契約書や重要事項説明書のどこに書いてあるのか。以前払った費用とは何が違うのか。実際に何をしてもらう費用なのか。

でも、聞こうとすると迷う。

値切っているみたいで格好悪い。細かい客だと思われそうで気まずい。担当者は丁寧に対応してくれているから、こちらが疑いすぎているようにも感じる。確認したことで、契約や入居に悪影響が出たらどうしようとも思う。そもそも、自分でも何をどう聞けばいいのか分からない。

それでも勇気を出して聞く。

すると、返ってくるのは「当社の規定です」「通常この形です」「変更できません」「問題ありません」という言葉だったりする。

もちろん、会社ごとに運用や基準があること自体は分かる。必要な業務があり、必要な費用があることも分かる。

でも、「当社の規定です」と言われただけでは、借主が知りたいことへの答えではない。

知りたいのは、社内でそう決まっているかどうかではない。その費用が何の対価なのか。なぜ借主が負担するのか。どの書面に根拠があるのか。いつ説明され、何に同意したことになっているのか。その名目で請求してよい理由は何なのか。

そこが分からないまま「規定です」「変えられません」で終わると、借主側には反論のしようがない。丁寧に言われるほど、余計に「そういうものなのか」と思ってしまう。強く言い返すほどの自信もない。かといって、納得できたわけでもない。

結果として、多くの人は半分あきらめる。弁護士に相談するほどの金額ではない。行政に持っていくほど大きな事件にも見えない。でも、自分で整理するには資料も多く、言葉も難しい。だから「よく分からないけど、これ以上は面倒だから払ってしまおう」になる。

このサービスが向き合いたいのは、まさにその手前にある状態だ。大げさに争う前。弁護士や行政に相談する前。でも、何となく納得できないまま流されそうになっている段階。

そこで必要なのは、相手を責める言葉ではなく、確認するための言葉だと思う。

「これは不当です」と決めつけるのではなく、「この費用は何の対価ですか」と聞けること。

「払いたくありません」と感情的に返すのではなく、「契約書・重要事項説明書・請求書のどの記載に基づく費用ですか」と確認できること。

「当社の規定です」と言われたときに、「その社内規定が、借主の負担義務として成立する根拠はどこにありますか」と聞き返せること。


私自身の話を、もう少し具体的にします。

私は、約2年住んだ部屋の再契約の場面で、いくつかの費用について確認しました。

最初に気になったのは、再契約時の請求書に「仲介手数料」と書かれていたことです。

同じ部屋に住み続けるだけなのに、なぜもう一度「仲介手数料」が発生するのか。入居時にも仲介手数料を払っているのに、今回の費用は何が違うのか。新しく物件を紹介してもらったわけでも、別の部屋を探してもらったわけでもない。では、これは何の対価なのか。

そう確認しました。

すると、「仲介手数料」ではなく「事務手数料です」という説明になりました。

では、事務手数料なら、どのような事務の対価なのか。契約書や重要事項説明書のどこに根拠があるのか。借主がその事務を依頼したことになるのか。社内の最低金額という説明だけで、なぜ借主の負担になるのか。

そう聞いていくと、今度は「再契約に伴う手続全体の費用」「実務上は一体」というような整理になっていきました。

つまり、請求書では「仲介手数料」。説明では「事務手数料」。さらに聞くと「手続全体の費用」。根拠を聞くと「書式上の問題」。

私が知りたかったのは、呼び方ではありませんでした。その費用が、結局何の対価なのか。なぜ借主が負担するのか。どの書面に基づいているのか。以前払った費用と重なっていないのか。そこでした。

でも、返ってきたのは「違法ではありません」「問題ありません」という結論でした。

違法かどうかを聞いているのではありません。何の費用なのかを聞いている。問題ないという結論ではなく、なぜ問題ないと言えるのかを知りたい。けれど、その間が埋まらない。

鍵交換代についても確認しました。入居時に鍵交換代を支払っていました。いつ交換されたのか、どの業者が行ったのか、作業内容や明細を確認したいと伝えました。返ってきたのは、「明細提示が必要という法的根拠はありません」という趣旨の回答でした。

でも、こちらが聞きたかったのは、明細提示義務の法律論だけではありません。実際に鍵交換が行われたのか。いつ行われたのか。支払った金額は何の作業に対応しているのか。そういう、支払いを判断するための事実でした。

さらに、住まいの不具合についても確認しました。天井裏から小動物のような音がしていて、夜間の生活にも支障がありました。調査や対応の予定、侵入経路の確認、再発防止について確認したいと伝えました。返ってきたのは「別途対応中です」という説明でした。一方で、再契約の費用や意思確認は進んでいきました。

不具合への対応方針が整理されていない。費用の根拠もまだ分からない。それでも、再契約するのかしないのかを判断しなければならない。この順番にも強い違和感がありました。

そして、最も大きかったのが、連帯保証人への連絡です。

私は家賃を滞納していたわけではありません。連絡が取れなかったわけでもありません。ただ、再契約費用の名目や根拠について確認していただけでした。それでも、借主本人との整理が十分につく前に、連帯保証人である家族へ連絡が行きました。

この時点で、問題はお金だけではなくなりました。家族から見れば、何かトラブルを起こしているように見えるかもしれない。自分が確認しているだけなのに、家族に説明しなければならない。後に、家賃滞納などの緊急性があった状況ではなかったこと、配慮が十分でなかった部分があったことは、相手方の回答でも認められました。でも、その時点では、借主側の心理的な負担はすでに発生していました。

このやり取りを通じて、私は何度も同じ壁にぶつかりました。

「これは何の費用ですか」と聞く。「問題ありません」と返ってくる。

「どの書面に根拠がありますか」と聞く。「契約書に署名されています」と返ってくる。

「実際に何が行われた費用ですか」と聞く。「明細提示義務はありません」と返ってくる。

「本人との整理がつく前に保証人へ連絡する必要がありましたか」と聞く。「連帯保証人は重い責任を負う立場です」と返ってくる。

聞いていることと、返ってくることが少しずつずれている。

こちらは、違法かどうかを断定してほしかったわけではありません。何の対価として費用を払うのか、根拠は何か、名目はなぜ変わったのか。それを知りたかっただけです。でも、その基本的な情報が整理されないまま、「問題ない」「違法ではない」「不手際はない」という結論だけが返ってくる。

この状態では、借主は判断できません。

だから私は、契約書、重要事項説明書、請求書、領収書、メールのやり取りを一つずつ見返しました。どの書面に、どの名目で書かれているのか。同じ費用なのか、別の費用なのか。誰が請求して、誰が受け取っているのか。何が確認済みで、何が未整理なのか。

そうやって整理していくうちに、ようやく分かりました。

自分が知りたかったのは、法律の結論ではありませんでした。判断するための材料でした。


違法か否かを断定するものではない。返金を保証するものでもない。不動産会社を一方的に悪者にするものでもない。

判断できなかったのは、自分が弱かったからではありません。必要な情報が、判断できる形で並んでいなかっただけです。

強く言い返せる人だけが守られるのは、おかしいと思う。このサービスは、そのための小さな足場です。

作成者について

このサービスは、私自身が賃貸契約の費用や説明をめぐって、何を確認すればよいのか分からなくなった経験から作りました。

開発者について

私は不動産業者・弁護士・司法書士・宅地建物取引士ではありません。本サービスは、公的資料・国土交通省ガイドライン・宅地建物取引業法をもとに、借主が業者へ確認すべき論点を整理する補助ツールです。違法・適法の断定や代理交渉は行いません。

賃貸契約における費用や説明の問題をより正確に扱うため、宅地建物取引に関する知識を継続的に学び、宅地建物取引士資格の取得も目指しています。

将来的には弁護士等の専門家による確認・監修を取り入れ、サービスの表現や診断ロジックをより安全で信頼できるものにしていく予定です。

現時点でこのサービスが目指しているのは、専門家の代わりになることではありません。専門家に相談する前、あるいは相談するほどではないと感じる段階で、借主が自分の状況を整理し、何を確認すればよいのかを把握できるようにすることです。

業者には、あなたが知らない義務がある

宅地建物取引業法が定める3つの義務

第35条

重要事項説明義務

契約前に費用の内容・根拠を書面で説明しなければならない。説明されていない費用の根拠を求める権利があります。

第46条

報酬の上限規制

仲介手数料は借主から賃料0.5ヶ月が原則。1ヶ月とするには説明と承諾が必要です。超過請求には根拠の提示が求められます。

第47条

禁止行為

重要な事実を告げない・虚偽を告げることは禁止。任意なのに「必須」と言うことは禁止行為にあたる可能性があります。

違反した業者は行政処分(指示・業務停止・免許取消)を受けます。 実際に、重要事項の説明なしで営業停止、虚偽記載で営業停止7〜29日の処分事例があります。
処分事例を確認する(国土交通省) →

このサービスが根拠にしているもの

宅地建物取引業法

  • ・第31条 誠実義務
  • ・第35条 重要事項説明義務
  • ・第46条 報酬の上限規制
  • ・第47条 禁止行為

消費者契約法

第10条 不当条項の無効

「書いてある・サインした」だけでは有効にならないことがあります。 消費者の権利を一方的に制限する条項は無効になり得ます。

国土交通省ガイドライン

  • ・入居前クリーニングは本来貸主負担
  • ・鍵交換は本来貸主が行うもの
  • ・経年劣化は借主負担にならない

法的強制力はないが裁判の判断基準として機能します。

編集・出典方針

一次情報を優先

記事内の法令引用はe-Gov法令検索の条文、ガイドライン引用は国土交通省の公式ページを直接参照しています。二次情報・まとめサイトへの依存を避けています。

出典は記事末尾に明示

各記事の末尾に参照した法令・ガイドライン・裁判所情報を記載しています。引用URL・発行機関・参照内容を確認できる形で掲示しています。

断定表現を避ける

「違法」「必ず返金される」などの結論的表現は使いません。「確認余地がある」「根拠の説明を求める場面」という形で、借主が判断材料を得ることを目的としています。

記事内容の更新

法改正・ガイドライン改訂・行政処分事例の蓄積に応じて内容を随時更新します。記事の更新日は各記事ページに記載しています。

お問い合わせ・誤情報のご指摘:metalogos.asset.lab@gmail.com

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